櫛田てつ之扶 ( くしだ てつのすけ; Tetsunosuke Kushida)

 1935年京都に生まれる。

 京都教育大学にて数学を専攻する傍ら、福本正氏に作曲を学ぶ。卒業後、中瀬古和氏、映画音楽作曲家、高橋 半氏に師事すると共に、グループ「創る会」に参加し、広く作曲活動を始める。邦楽の家に生まれ育ったという環境で、作風は伝統的な邦楽を基調にした日本的あるいは民族主義的な路線を徹底してとっている。

この間、「石の庭」(1969年音楽之友社作曲賞)を通じポール・ヨーダー氏(ABA初代会長)に、また「飛鳥」(JBA作曲賞)の初演指揮者の辻井市太郎氏に、吹奏楽の作・編曲を学び吹奏楽に本格的に取り組み始める。

なお「飛鳥」は東京佼成ウインドオーケストラによってレコーディング・出版され、その後の国内外での演奏回数からみても吹奏楽の主要レパートリーの一つになっているといえる。

1981年全日本吹奏楽コンクールの課題曲「東北地方の民謡によるコラージュ」、同じく1994年の課題曲「雲のコラージュ」をはじめ、「火の伝説」「雪月花」「嵯峨野」「陽炎」「雲はその彩りをそえて」など多くの日本的な作品を数える。他にも、宗貞啓二・下地啓二・前田昌宏各氏のリサイタルのための作品、サクソフォン・アンサンブルの作品など、管楽器を中心とした作品が多く見られる。

1995年、日本吹奏楽学会より第5回日本吹奏楽アカデミー賞(作曲部門)を贈られる。同年7月、第7回世界吹奏楽祭(WASBE・浜松市)では、オープニングコンサートにて「舞楽II」(大阪市音楽団/指揮:木村吉宏)が演奏される。同年9月、スイス・ウスターでの第16回国際現代音楽祭に作品を委嘱され「秋の平安京」がバーデン=ブュルテンベルク・ウインドアンサンブルによって初演、ヨーロッパデビューを果たす。

また同年、大阪音楽大学特別講師として招聘され「日本の伝統音楽と吹奏楽」をテーマに講演、同テーマにより1997年、名古屋芸術大学ウィンドオーケストラと帯同し、広島・岡山にてレクチュアコンサートを開催する。

また、吹奏楽の編成の上で、一つの大きい骨格をなす、打楽器群に対するこだわりから、打楽器アンサンブルの作品も多く、注目されるところである。「イントロダクション・アンド・ダンス」シリーズ、「流氷」「華音」(CD・ドライブ収録)「南風」「蒼風」「クラリネットと打楽器のためのインプレッション」、そして和太鼓群のための「阿国」「姫雅舞」「情」が代表作に上げられる。

2004, 2006年新進ピアニスト織茂 学のための古今集をテーマにした、春・夏の一連のピアノ曲は、ピアノを邦楽に引き入れたユニークな作品となっている。

吹奏楽のほとんど集大成として作曲された、2005年の21世紀の吹奏楽演奏会・響宴で発表された「Foojin-雷神」は吹奏楽の多くの可能性を示したものとして注目を浴びた。

自身ライフ会員でもあるWASBEでは、2007年アイルランド総会で、「風雅」(名古屋芸術大学ウィンドオーケストラ/指揮:竹内雅一) を発表した。現在、京都女子大学発達教育学部・音楽教育専攻及び京都音楽院にて後進の指導にあたる。